脅威のアメリカ 希望のアメリカ 寺島実郎 著 岩波書店
P21 ペリーとマッカーサーは直接日本人と向き合い、日本の運命を変えた2人である。
この2人のアメリカ人には共通のものが横たわっている。
それは、1言で言えば、「対話と圧力」、つまり、「東洋人は権威と無言の圧力に弱い」との認識に立ち、
「平和の使者」という建前と、もし、権威を拒否したなら力で抑圧するという「無条件の服従」を要求する
性格をもっていた。
P27
20世紀のん本にとっての悲劇であり皮肉は、日本が日清戦争に勝ってアジアに野心を燃やし始めた時期と
米国がアジア太平洋に本格展開した時期が同時化したことである。
日本は米国のハワイ併合とフィリピン領有を横目で見ながら、この手法を真似ることに意識をし始めた。
「桂=タフト協定」秘密協定において、アメリカはフィリピンの統治領を了解してもらうかわりに、
日本は韓国の併合を認めてもらう。
P34
ヘンリールースという存在。
アメリカのメディア王。
この男によって、1930年代から「真珠湾」に向かう米国の世論は「反日、親中国」に変えられたといっても誇張ではない。
そして、「ルースが死ぬまで米国は共産中国を承認できなかった」という言葉があるがごとく、親台湾派の大物として
戦後の米国のアジア外交にまで影響を与え続けた。
そして、皮肉にもアジアにおける反共産の砦として敗戦後の日本を取り込むために
「サンフランシスコ講和会議」「日米安保条約」の影の推進者となり、結果として日本の国際社会復帰と戦後復興の
影の推進者になった。
P58
19世紀の100倍の戦死者
19世紀のアメリカはほとんど対外戦争をしなかった。「欧州の戦争に巻き込まれたくない」という米国独立の
背景となった意識を引きずり「モンロー主義」といわれた対外不干渉主義を貫いていた。
正確に言えばわずか3回の対外戦争をしたが、戦死者は3回合計でも4400人であった。
南北戦争という内戦に苦闘し、南軍に26万人、北軍に36万人の屍を積み上げたことを極端に少ない。
とにかく、対外戦争には反対を貫いていたが、20世紀に入ると絶え間なく戦争を続け、19世紀の100倍である、
43万人が戦死者になった。世界経済、産業に占める米国の比重が重くなるにつれて、自他共に認める役割意識が高まり、
結果として世界中の紛争に米国は関与することになった、血まみれの100年であった。
アメリカはいったい何を得たのだろうか?
P64
軍事的勝利になどというものに幻惑されずに、世界システムにおけるアメリカの存在を冷静に考察したウォーラステインが考察。
経済的に見ても米国の地盤沈下は明らかであった。「黄金の50年代」といわれた1955年に世界のGDPの36%を占めていた
米国は1990年には26%までシェアを落とした。もっとも、この数字を読むときに1955年に2%にしか過ぎなかった日本が
1990年には14%ととなり、それには円レートが6割も円高に修正された要素が大きいことや、1955年時点では、ソ連が世界GDPの
第2位で14%占めているとされていたが、90年には「通貨ルーブルの瓦解」によって国際統計からソ連の存在が消滅した要素も大きい。
世界GDPの3分の1を有していた米国が冷戦の終結を経て、世界4分の1になってしまった。
P82
米国経済の変質
産軍複合体から金融主導型産業構造へ
1990年、すなわち冷戦の終結からの10年間において米国は2,3兆ドルの経常収支の赤字を累積した。
しかし、その赤字を補って余りある資金2,4兆ドルを資本収支の黒字として世界中から吸い寄せ、その潤沢な資金が
株式に注入されることによって株価(NYダウ)を4倍にし、株価の」資産効果で消費や投資を拡大するという
「反映の10年」を創り出してきた。世に「金本位制度」という言葉があるが、「株本位制度」
という表現が成立するがごとく、米国は株価の高騰が付加価値を創出するというサイクルの名中を走ってきた。
P114
米国民のわずか14%しかパスポートを保有していない。
島国根性の日本ですら26%。アメリカミニ、グローバル。
「米国民の個人金融資産の5割が株式市場に注入されている」
P124
表層観察からすれば、「力の論理」が支配しているように見えるが、実は
「国際法理と国際協調によって世界秩序は制御されるべし」という動きがある。それが
国際軍事裁判所構想
2003年3月にオランダのハーグで批准。
すでに90カ国以上が批准している。
世界はアメリカの論理だけで動いているわけではない。
P145
日本人としてアメリカに学ぶこと
ひと、もの、かね、情報、技術などの常に新しい力を世界中から取り込むしなやかさであろう。
アメリカはエンジニアリング力に優れている。それは、多様な要素や手法を組み合わせて課題の
解決を図るアプローチであり、体系的、総合的に回答を探る総合戦略の設計力ともいえる。
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